「お子さんにふれていいんですよ」と第3者が背中をおしてあげることの重要性
親が自分の子どもにふれるのに、
第3者に許可をもらうことで、はじめて我が子にふれられる場合があります。
今まで何度かそういう場面に立ち会いました。
親自身が十分にふれてもらった経験がない場合
親自身が
- ふれてもらった経験が少ない
- マイナスの皮膚刺激を受けて育った経験がある(虐待等)
- 小さい頃から厳しく育てられた
- 甘え方がわからない
などの理由から
我が子に優しくふれたり、ハグしたりすることにためらいのある親御さんもいらっしゃます。
そういう時は、第3者が「お子さんにふれてもいいんですよ」
とひとこと言うだけで、そのハードルがなくなることがあります。
お母さんが70代、娘さんが40代
娘さんが「お母さん(おそらく70代)にハグしてと言っても拒絶されます。」とおっしゃっていました。
私はお母さんにお話をして
娘さんにハグしてください、ということを伝えました。
お母さんは「そういえば小さい頃よくだっこしてたわ」とおっしゃいました。
娘さんがお母さんに「ハグして」と伝えると、
お母さんはすぐに「小さい頃よくこうしてた」と言いながらハグしていました。
私はその場から静かにフェイドアウトさせていただきました。

※親御さん自身が虐待を受けた経験がある場合には、
まず親御さん自身に、人にふれてもらうことに安心感を持ってもらうところから始めたほうがよいと思いますので、ご留意ください。
お子さんが障がいを持っている、医療的ケアを受けている場合
こういう時に、親御さんがお子さんにふれることをためらったり、ふれられないことがあります。
理由はいくつかあると思います。
例えば
- お子さんの病気や障がいを受け入れることができない
⇒ お子さん自身を受け入れることができない - マッサージなどをすることで病状を悪化させてしまうのではないかという不安がある
- たくさんの医療的ケアをしているので、親ができることはもうないと思っている
- 関わり合いが難しく(声を発したり、話したり、目を合わせたり、授乳したり、絵本を読み聞かせしたり、おもちゃで遊んだり、など)
働きかけをすることをあきらめている - 何かしてあげたいけれども、どうしたらよいかその方法が分からない
そういう時は、第3者が「ふれていいんですよ」と一声かけることが大切です。
そのときに合わせて伝えるのは
- ふれても大丈夫だということ
- いつからでも遅くはないということ
- 痛みの感覚を和らげるには、ふれることがとても有効だということ
- ふれる箇所は、ごく狭い範囲でも十分だということ
- ふれることで、お互いに穏やかな気持ちになること
- ふれることで、相手のことが心から好きになるということ
- 医療行為やリハビリは、時にマイナスの皮膚刺激となるので、それをカバーするくらいのプラスの皮膚刺激を入れてバランスをとることが大切だということ
- 子どもの発達(脳も身体も)にはふれる刺激がとても重要な役割をしているということ
- なるべく早い時期からプラスの触覚刺激を入れることで、脳神経の発達が促されるということ
- こどもは、ふれてもらうのを全身で待っているということ

実際には、こどもの入院中に自分で調べて習いに行く余裕があることは、ほぼないです。
タッチケアのことを家族に教えてくれる誰かが院内にいてくれたら、
それで救われる家族は本当にたくさんいると思います。
命を守るため、命をつなぐために、医療は絶対に必要です。
タッチケアはそれに代われるものではありませんが、
医療を補完するものとして行うことで、
治療に前向きに取り組めるように元気づけたり、
親の心を支えたりできます。
こどもの病気や障がいは、親と子どもは切っても切れない1セットです。
子どもの未来がもっと明るいものになります。
日本でも、医療の場にタッチケアがあたりまえに見られるようになる日がきますように。