タッチケアの仕組みとそのメリット
タッチケアは赤ちゃんだけのもの?
タッチケアと聞くと、何を連想しますか?
ベビーマッサージ 小さい子どものためのもの
というイメージが強いかもしれません。

私は、仕事やボランティアで
生れて間もない0歳の赤ちゃんから旅立っていかれる方まで
幅広い年代の方にお会いします。
そして、どの年代であっても
その時その時に応じた人と人とのふれあいが必要だと実感しています。
そもそも、タッチケアとは?
人が人にふれることによって、脳にプラスの刺激を与え、
その刺激が全身によい影響を及ぼし、
身体的機能の向上、心理的ストレスの軽減につながるのがタッチケアです。

皮膚感覚に温かく心地よい刺激が与えると
脳に良い影響を与えることができます。
心地よい皮膚刺激は
自律神経(交感神経と副交感神経のバランスの維持)
内分泌系(ホルモンバランスの調整)
神経伝達物質の調整へ作用します。
さらに
リンパ系(自己治癒力の向上)
呼吸器系、消化器系へも作用します。
肌にふれることが、なぜ脳や全身に作用するのかというと、
「皮脳同根」といって、皮膚と脳はもともと同じ細胞群から発生します。
そのため皮膚感覚と脳機能は
とても密接につながって大きく影響しあっているからです。
専門家の先生方はこのように表現されています。
「肌は露出した脳である」(桜美林大学身体心理学教授山口創先生)
「皮膚はそれ自体が自立した内臓器官である」(工学博士・資生堂主任研究員傳田光洋先生)
また海外の小説の中には皮膚のことを「外脳」と表現しているものもあります。
タッチケアのメリット
①身体的利点
- 筋緊張と筋弛緩の改善
- 呼吸機能の改善
- 関節の可動域の改善
- 痛みの感覚の緩和
- 睡眠の質の向上
- 適切なホルモンの生成と分泌
- 身体感覚が養われる
- 触覚の過敏性の緩和
- 成長促進
- 身体が温かくなる
- 血圧や脈拍が安定する など

②心理的利点
- ストレスの軽減
- 不安や恐怖の緩和
- コミュニケーションの改善
- ストレス耐性の強化
- 自己と他人との間に健全な境界線が育つ
- 自分の身体のイメージを受け入れやすくなる
- 相手(ふれてくれる人)に対して興味がわく
- 相手(ふれてくれる人)に好意を持つ
- 攻撃的行動が減る など
③長期的な利点
- 自尊心の土台となる
- 社会性の基礎をつくる
- 心理的な居場所(帰ってくる場所)が育つ
- 適切な距離をもってコミュニケーションが取れる
- 心理的安定感が増す など

タッチケアの相互作用
タッチケアはやる人にも大きなメリットがあります。
ふれるということは
相手がいて、相手に受け入れてもらって、はじめてできることです。
だから
ふれる=ふれられる です。
親、養育者、介護者への利点
- コミュニケーションの改善
- ストレスや不安の軽減
- 育児や介護に自信がつく
- 無力感や罪悪感が和らぐ
- 相手のことを、自分と違う一人の人として見られるようになる
- 子育てや介護が楽になる

どのくらいやったらいいの?
タッチケアを始めてから変化が見えはじめるまでの期間や、
変化の大きさは人それぞれです。
2~3日ではっきりとした変化がみられる場合もありますし、
何か月かかかって実感する場合もあります。
変化が見えにくいとすぐにやめてしまいたくなるかもしれませんが、
少しづつでも続けていくことで必ずお互いに変化があります。
タッチケアの効果は、子どもの身長が伸びるのに似ています。
1日1日の変化は目に見えませんが、
何か月か経つとこんなに伸びていた!みたいなものです。
そして
アプローチの仕方やり方を間違わなければ
時間の無駄だった やらなければよかった
ということはありません。
子どもが大きくなってしまったら意味がない?
「もう大きくなってしまって」
「いまさら恥ずかしくてさわれない」という場合でも、
焦らずに少しづつふれる時間を増やしていけば大丈夫です。
見送る時、出迎えるときに、肩や背中をポンとするとか
ご飯を出すときにどうぞと言いながら肩をぽんぽんするとか、
ワンポイントタッチで十分です。
始めるのに、もう遅いということはありません。
いつからでもお互いに良い変化が起きていくのが
タッチケアのすごいところです。
タッチケアによってできる信頼関係やコミュニケーションは
一生の宝物になります。

